特許法29条1項|新規性を徹底解説【公知・公用・刊行物/回線】

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✅ この記事の結論
特許法29条1項の新規性は、「いつ(特許出願前=時分単位)」「どこで(日本国内又は外国)」「どういう状態で公開されたか(1号・2号・3号)」の3点で決まります。短答で狙われるのは知識そのものではなく、この3点のうちどれか1つをすり替えてくる作り方です。特に「テレビ放送は3号の電気通信回線に含まれない(1号・2号で処理する)」「極めて少数の者が知っていても秘密保持義務がなければ公然」の2つは、条文だけを読んでいても絶対に出てきません。

弁理士試験の短答式で、特許法29条1項は毎年のように顔を出します。条文自体はわずか3行。それなのに、この記事で扱う過去問を見ればわかるとおり、出題者は条文を読んだだけでは絶対に答えが出ない場所を狙ってきます。放送は「電気通信回線」か。3人しか聞いていない講義は「公然」か。誰も閲覧していない外国の刊行物は「頒布された」といえるか。いずれも条文の文言そのものには答えが書かれていません。

私自身、令和7年度の短答式は41点(特許・実用新案16点/意匠9点/商標5点/条約8点/著不3点)で不合格でした。特許は比較的取れている科目ですが、それでも29条1項まわりで取りこぼしがあります。この記事は、その反省を踏まえて「条文 → 青本 → 審査基準 → 過去問 → 論文」の順で一気通貫に整理し直しました

特許法第29条第1項の条文

特許法 第29条(特許の要件)第1項産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

条文の構造を先に押さえておきます。柱書が「産業上利用することができる発明をした者は……特許を受けることができる」という積極要件、各号が「次に掲げる発明を除き」という消極要件(=新規性喪失事由)です。したがって条文上、新規性は「あることを証明する要件」ではなく「各号に該当しないこと」として組み立てられています。答案でここを逆に書くと、それだけで理解を疑われます。

📌 要点
① 判断時は「特許出願前」——日ではなく時・分まで見る(39条・72条とは違う)
② 場所は「日本国内又は外国」——世界公知主義(平成11年改正で国内主義から拡大)
③ 態様は1号(知られた)・2号(実施された)・3号(刊行物/電気通信回線)の3類型のみ。これ以外の理由で新規性は失われない。

制度趣旨——なぜ新規性が要求されるのか

特許制度は、発明を公開した者に対して、その代償として一定期間の独占権を与える制度です(特1条、特68条)。そうすると、すでに社会に出てしまっている発明に独占権を与えても、社会は何も新しく得るものがないことになります。それどころか、これまで自由に使えていた技術が突然使えなくなり、産業の発達を阻害します。だから「すでに公開されている発明は特許しない」というのが新規性の骨格です。

青本(工業所有権法逐条解説)第29条より「新規性を発明の構成要件であると考えるならばその要件の有無は当然発明した時点において論じられるべきである。にもかかわらず、『特許出願前……』という語からも理解されるように新規性は特許出願の時点において問題を捉えているのである。」

出典:特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』第29条〔参考〕。※引用文言は要照合

【かみ砕くと】「新規性」は発明そのものの性質(=発明が成立するための条件)ではなく、特許を受けるための条件だ、と現行法は割り切っています。だから判断時点も「発明時」ではなく「特許出願時」になります。

【なぜこの趣旨が試験で問われるのか】特2条1項の「創作」は発明時を基準とする主観的なもの、29条の新規性・進歩性は出願時を基準とする客観的なものです。この対比は青本でも明示的に書いている箇所で、論文で「新規性とは何か」を書き出すときの導入としてそのまま使えます。

新規性を決める3つの座標(WHEN / WHERE / WHAT)

29条1項各号は、すべて「特許出願前に(=WHEN)/日本国内又は外国において(=WHERE)/○○された発明(=WHAT)」という同じ型で書かれています。短答の枝は、この3つの座標のどれかを1個だけ動かして誤りを作ってきます。逆に言えば、枝を読むときは「時点・場所・態様のどこをいじってきたか」を探せばいいということです。

WHEN:「特許出願前」は時・分まで見る

青本 第29条〔字句の解釈〕2〉特許出願前「本条の場合は『特許出願の日前』というのと異なり、時や分についても問題となる。したがって、午前中に当該発明が公知にされ、午後その発明について特許出願をしても、その特許出願は本条一項一号に該当するものとして拒絶されることになる(三〇条の規定により新規性の喪失の例外適用を受ける場合は別である。)。この点、三九条や七二条等の場合において日の先後の関係のみをみて、日が同じであれば時や分については先後の関係をみないこととは相違している。」

出典:特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』第29条〔字句の解釈〕。

ここは29条と39条の決定的な違いであり、短答で最も使われる論点のひとつです。整理すると次のようになります。

条文条文上の表現時・分を見るか
特29条1項(新規性)特許出願見る
特29条の2(拡大先願)特許出願の日前見ない(日で判断)
特39条(先願)異なつた/同見ない(日で判断)

つまり同じ日でも、午前に公知になれば午後の出願はアウト。一方、同じ日に出された2つの出願は、何時何分に出されていようと39条上は「同日出願」として扱われ、39条1項(先願)ではなく39条2項(協議)の問題になります。この非対称性を突く枝は繰り返し出ています。

基準時がズレる出願——ここが盲点

「特許出願前」といっても、実際の出願日がそのまま基準になるとは限りません。遡及効のある制度が絡むと、新規性の判断基準時は前にずれます。審査基準はこれを表で整理しています。

出願の種類新規性判断の基準時根拠
通常の特許出願その特許出願の時特29条1項
分割出願原出願の出願時特44条2項
変更出願原出願の出願時特46条6項
実用新案登録に基づく特許出願実用新案登録出願の出願時特46条の2第2項
国内優先権の主張を伴う出願先の出願の出願時特41条2項
パリ条約による優先権の主張を伴う出願第一国出願の出願日パリ条約4条B
国際特許出願国際出願日特184条の3第1項

ここで注意したいのが「日」なのか「時」なのかです。分割・変更・国内優先は出願時まで遡りますが、パリ優先と国際出願は条文上出願日が基準になります。細かい話ですが、こういう文言の差が枝の作り込みに使われます。

WHERE:「日本国内又は外国」=世界公知主義

1号から3号まで、すべて「日本国内又は外国において」と書かれています。つまり世界中どこで公開されていてもアウトです。これは当然のようでいて、実は歴史的な経緯があります。

青本によれば、現行法制定時には刊行物(現3号)についてのみ外国が含まれ、公知・公用(1号・2号)は日本国内に限られていました。これが平成11年改正で世界へと拡大されています。理由は、交通手段の発達とインターネットをはじめとする情報通信の発展により、国外における公知・公用の事実の調査が現行法制定時に比べて容易になったから、と説明されています。あわせて同改正で、インターネット等に開示された発明(=3号後段の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」)が新規性喪失事由に追加されました。

📝 覚え方のポイント
1号〜3号の条文をよく見ると、3号だけ「において、」の後に読点があるのがわかります。これは「日本国内又は外国において」が、後続の「頒布された刊行物に記載された発明」と「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」の両方にかかることを示すためです。素読のときに気づけると、3号が2つの類型を含んでいることが視覚的に定着します。

三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

WHAT:1号・2号・3号の中身

1号:公然知られた発明(公知)

「公然」の意味は、青本が判例を踏まえて具体的に説明しています。ここは短答でよく聞かれるので、原文に近い形で押さえてください。

青本 第29条〔字句の解釈〕3〉公然「公開的という程度の意味である。したがって、その発明が秘密の範囲を脱出したことを意味する。
イ 公然とは、必ずしも多数の者ということを意味しない。すなわち、極めて少数の者が知っている場合であってもこれらの者が秘密を保つ義務を有しない者である場合は公然ということを妨げない。
ロ 多数の者が知っているということは必ずしも公然であるということにはならない。すなわち、その多数の者が、秘密を保つべき義務のある特許庁の職員、工場の従業員のような場合は公然ではない。」

出典:特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』第29条〔字句の解釈〕。※引用文言は要照合

この2文が、そのまま令和7年度の短答式(特実 第2問 枝イ)の解答根拠になっています。判断のメルクマールは「人数」ではなく「秘密保持義務の有無」です。人数はいくら少なくても、義務がなければ公然。逆に人数がいくら多くても、義務があれば公然ではない。

  • 秘密保持義務のない者に/知られたかどうか(義務があれば非公知)
  • 現実に内容が知られたこと(「知られ得る状態」では足りず、1号は現実の認識を要すると解されています)
  • 知った者が発明の内容を理解できたこと(技術的に理解できない幼児等が見ただけでは足りません)

なお、秘密保持義務は明文の契約に限りません。青本は、組合契約で秘密保持を定めていても「組合解散後も秘密にしなければならない」旨の明文がない限り、組合の解散と同時に秘密保持義務も解除されるとされた例を挙げています。義務が「いつまで続くか」も論点になり得る、ということです。

2号:公然実施をされた発明(公用)

2号は、発明が実施(特2条3項)されたことによって新規性を失う類型です。1号との違いは、「知られた」という結果ではなく「実施」という行為に着目している点にあります。

実務・審査の場面では、次の3つの状況に分けて考えると整理しやすくなります。

状況具体例2号該当性
実施により内容が現実に知られた工場見学で装置の内部まで公開した該当(1号にも該当し得る)
内容を知り得る状況での実施当業者が見れば構造がわかる状態で稼働させた該当
内容を知られるおそれのある実施外観だけでは工程がわからないが、見学者が内部を見たり説明を受けたりできる状態該当し得る

ポイントは、「装置の外から見えるか」ではなく「当業者が内容を把握できる状態に置かれたか」で判断されるという点です。「工場内だから非公知」と機械的に処理すると危険で、見学者に秘密保持義務がなく、内部を見ることや説明を受けることが可能な状態なら、公然実施と評価される余地があります。

3号前段:頒布された刊行物に記載された発明

青本 第29条〔字句の解釈〕4〉頒布された刊行物「公衆に対して頒布により公開することを目的として複製された文書、図面その他これに類する情報伝達媒体を刊行物という。……次に頒布とは、上記のような刊行物が不特定多数の者が見得るような状態に置かれることをいう。現実に誰かがその刊行物を見たという事実を必要としない。」

出典:特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』第29条〔字句の解釈〕。※引用文言は要照合

ここから、刊行物には①公開性・②情報性・③頒布性の3つが必要だと整理できます。この3要素で具体例を裁くと、次のようになります。

対象刊行物か理由
限定出版物・非売品該当する部数が少なくても、公開目的で複製されている
秘密出版物該当しない公開性を欠く
私文書を友人多数に配るための印刷物該当しない公衆への公開を目的としていない
出願明細書の複写物該当する公衆が入手できる形で複製されている
出願明細書の原本該当しない頒布性を欠く(1点しかない)

また「記載された発明」とは、刊行物に明示的に書かれている事項だけでなく、記載されているに等しい事項から把握される発明を含みます。「記載されているに等しい事項」とは、記載事項から本願出願時の技術常識を参酌することで導き出せる事項です。ここは進歩性(29条2項)との境界が曖昧になりやすいところで、技術常識を「参酌」する(=新規性)のか、技術常識を使って「動機付けを認定」する(=進歩性)のかという違いを意識しておくと混乱しません。

「刊行物に記載された発明」の意義最判昭和61年10月3日(いわゆる一眼レフカメラ事件)29条1項3号にいう「刊行物に記載された発明」といえるためには、当業者がその刊行物の記載に基づいて反復実施し、目的とする技術的効果を挙げることができる程度に技術的事項が開示されている必要があると解されています。単に発明の名称や結果だけが書いてあっても、実施可能な程度の開示がなければ引用発明としては使えない、ということです。
【試験での使われ方】論文で「引用文献の記載が抽象的であるにもかかわらず新規性なしとされた」という事案が出たとき、この判示を引いて反論を組み立てます。

3号後段:電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明

この記事で最も重要な論点です。「電気通信回線」の定義を、青本は極めて明確に書いています。

青本 第29条〔字句の解釈〕5〉電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「電気通信回線とは、有線又は無線により双方向に通信可能な電気通信手段を意味するので、一方向からしか情報を通信できないもの(例えば放送)は除かれる。公衆に利用可能とは、発明の開示された情報が公衆(不特定多数の者)にアクセス可能な状態に置かれることをいう。現実に誰かがその情報を見たという事実を必要としない。個人間の私信メール、特定の者(守秘義務を持った者、特定の会社の従業員等)のみがアクセス可能な情報は、公衆に利用可能となったものではない。」

出典:特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』第29条〔字句の解釈〕。※引用文言は要照合

審査基準も同じ立場で、「回線」とは往復の通信路で構成された双方向に通信可能な伝送路を意味し、一方向にしか情報を送信できない放送は「回線」に含まれない、双方向からの通信を伝送するケーブルテレビ等は「回線」に該当する、と明示しています。

特許・実用新案審査基準より(要旨)「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」とは、電気通信回線を通じて不特定の者が見得るような状態に置かれたウェブページ等に掲載されたことをいうものとされています。現実に誰かがアクセスした事実は不要で、公知のウェブページ等からリンクをたどって到達できる場合、検索エンジンに登録されている場合、URLが新聞・雑誌等の一般的な情報伝達手段に掲載されている場合、公衆からのアクセス制限がされていない場合などが該当します。

出典:特許庁ウェブサイト「特許・実用新案審査基準 第III部 第2章 新規性・進歩性」https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/index.html(2026年8月18日利用)を基に要約

⚠ ここが本命のひっかけ:テレビ放送は3号ではない「テレビの生放送番組で発明の内容をすべて説明した」→ 29条1項3号(電気通信回線)に該当する——これは誤りです。放送は一方向にしか情報を送信できないため「回線」に含まれません。
ではセーフかというと、まったく違います。テレビで説明された発明は、1号の「公然知られた発明」に該当します(不特定多数の視聴者が現実に内容を知り得る状態で、秘密保持義務もない)。
つまり結論(新規性なし・拒絶理由あり)は同じだが、根拠となる号が違う。短答はこの「号のすり替え」を仕掛けてきます。結論だけで○×を判断すると必ず落とします。

なお、放送が「回線」に含まれないのは29条1項3号の話に限られます。青本は、放送網を通じたプログラム等の提供が「発明の実施」に含まれないことを意味するものではない、と明確に否定しています(特2条3項の「譲渡、貸渡し」に含まれると解釈される)。29条の文脈と2条の文脈で「放送」の扱いが違う——ここも一段深いひっかけになり得ます。

新規性の判断手法

審査官が新規性を判断する手順は、審査基準で次のように定型化されています。

  • 請求項に係る発明の発明特定事項を認定する
  • 引用発明を文言で表現する場合に必要と認められる事項(引用発明特定事項)を認定する
  • 両者を対比し、一致点と相違点を認定する
  • 相違点がなければ新規性なし(29条1項各号)→ 拒絶理由通知
  • 相違点があれば新規性あり → 続いて進歩性(29条2項)の判断へ進む

💡 新規性と進歩性を分ける決定的な一線
新規性の判断では、審査官は独立した2以上の引用発明を組み合わせて請求項に係る発明と対比することができません。組み合わせて初めて到達できるのなら、それは新規性の問題ではなく進歩性(29条2項)の問題です。
「文献A+文献Bを合わせれば同じ発明になるから新規性なし」という枝は、この一線を越えているので誤りになります。

四法対照:新規性は四法でどう違うか

観点特許実用新案意匠商標
根拠条文特29①実3①意3①該当規定なし
判断の基準時出願時(時・分まで)出願時(時・分まで)出願時(時・分まで)
地理的範囲日本国内又は外国日本国内又は外国日本国内又は外国
喪失事由の類型公知・公用・刊行物/回線(3号)特許とほぼ同一公知・刊行物/回線+類似意匠(3①iii)
「公然実施」の号あり(29①ii)あり(実3①ii)なし(意匠は「公然知られた」で足りる)
喪失の例外規定特30条実11①で特30準用意4条なし
例外の期間1年1年1年
実体審査の有無ありなし(無審査主義)ありあり
ひとこと基準となる型条文構造は同じだが審査されないので登録段階では効かない類似意匠まで新規性喪失事由に含む点が最大の違い新規性という概念自体が存在しない。商標は識別力(商3条)と先願の他人の登録商標(商4①xi)で処理する

四法対照でいちばん大事なのは、商標に「新規性」がないという一点です。商標法は創作を保護する法律ではなく、業務上の信用を保護する法律なので、「新しいかどうか」は問題になりません。むしろ長く使われて有名になっているほど保護は厚くなる——この価値観の反転を押さえておくと、四法横断の問題で軸がぶれません。

意匠については、意3条1項3号が「公然知られた意匠……に類似する意匠」まで登録を受けられないとしている点が特徴です。特許は「同一」で切れますが、意匠は「類似」まで切ります。この差は、意匠が形態という視覚的な対象を保護しているためです。

新規性がない場合の法律上の取扱い

局面効果条文
審査段階拒絶理由となる特49条2号
設定登録後(一定期間内)特許異議申立ての理由となる特113条2号
設定登録後特許無効審判の理由となる特123条1項2号
新規性がある場合他の特許要件を満たせば設定登録され、特許権が発生特66条・特68条

この「49条2号 → 113条2号 → 123条1項2号」の並びは、新規性に限らず29条・29条の2・39条に共通する拒絶・異議・無効の基本ラインです。号数まで含めてセットで覚えておくと、四法対照記事を読むときの土台になります。

短答のポイント7つ

① 時点——「出願前」か「出願の日前」か

29条1項は時・分まで。29条の2と39条は日単位。枝に日付と時刻が両方書かれていたら、ほぼ確実にここが論点です。

② 場所——「日本国内」だけに絞られていないか

「日本国内において公然知られた発明に限り」といった限定が入っていたら誤り。平成11年改正以降、1号・2号も世界公知です。

③ 号の割当て——結論が同じでも根拠条文が違う

放送は1号、インターネットは3号後段、工場見学は2号。結論(新規性喪失)が正しくても、号が違えば枝は誤りになります。

④ 人数か義務か

「極めて少数だから公知でない」「多数が知っているから公知」——どちらも単独では誤り。判断基準は秘密保持義務の有無です。

⑤ 現実の認識を要するか

1号は現実に知られたことを要しますが、3号の「頒布」と「公衆に利用可能」は現実に誰かが見た事実を要しません。ここは1号と3号で扱いが逆転します。

⑥ 例外規定(30条)の要件を混ぜてこないか

新規性喪失の例外は、①1年以内の出願 ②出願と同時の書面提出 ③出願日から30日以内の証明書提出(30条2項・3項)。この期間の数字を入れ替えてくる枝が定番です。証明書提出が遅れた場合の救済(30条4項)は理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内、かつその期間の経過後6月以内

⑦ 引用発明の組合せ禁止

新規性の判断で2以上の引用発明を組み合わせることはできません。組み合わせたら進歩性の土俵です。

過去問演習

ここからは、特許庁が公表している短答式試験の問題文をそのまま掲載して確認します(出典は記事末尾に記載)。平成期の枝も含めていますが、いずれも現行法で結論が変わらないものに絞りました。解説はすべて条文・青本・審査基準から書き起こしたものです。

Q1 発明の内容を知る者が「極めて少数」の場合
令和7年度 短答式筆記試験 特許・実用新案 第2問 枝(イ)/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】特許出願に係る発明イについて、その特許出願前に複数の者が当該発明イの内容を知っている場合、当該発明イの内容を知っている者の数が極めて少数であれば、これらの者が当該発明イについて秘密を保つ義務を有するか否かにかかわらず、当該発明イが特許法第29条第1項第1号に規定する「特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明」に該当することはない。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特29条1項1号

【解説】「公然」とは、発明が秘密の範囲を脱したことを意味します。知っている者が極めて少数であっても、その者らが秘密を保つ義務を負っていなければ「公然知られた」に該当し得ます。枝は「秘密を保つ義務を有するか否かにかかわらず」該当しないと言い切っているので、誤りです。

【なぜ間違えるのか】「公然」という語感から、つい人数の多寡で判断してしまうためです。条文の趣旨は「秘密でなくなったか」であって、頭数ではありません。逆パターン(多数が知っていても全員に守秘義務があれば非公知)とセットで覚えると定着します。

【関連して押さえる条文】特29条1項2号(公然実施)、特30条(新規性喪失の例外)

Q2 受講者3人の大学の講義で発明を解説した場合
平成20年度 短答式筆記試験 第20問 枝(ハ)/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】甲は、自らした発明イについて特許出願Aをしたが、Aの出願の日前に、大学の講義の中でイの内容を詳細に解説していた。当該講義に出席していた受講者は3人であった。この場合、Aは当該甲の講義により特許法第29条第1項各号のいずれかに掲げる発明であることを理由として拒絶されることがある。

【正誤】○(正しい)

【根拠条文】特29条1項1号、特49条2号

【解説】Q1の裏返しにあたる出題です。受講者が3人しかいなくても、その3人が甲に対して秘密保持義務を負っていなければ、発明は秘密の範囲を脱したことになり、1号の「公然知られた発明」に該当します。したがって出願Aは拒絶され得ます。

【なぜ間違えるのか】「3人」という具体的な数字を見せられると、条文の判断基準ではなく自分の感覚で「これは少ないからセーフだろう」と処理してしまうからです。数字が書いてあるときこそ、数字は判断基準ではないと疑うのが正解への近道です。
あわせて語尾にも注目してください。「拒絶されることがある」という可能性を述べる形なので、受講者に守秘義務があるケースを想定しても枝は成立します。

【関連して押さえる条文】特30条2項(学会発表等に起因する公開の救済)

Q3 テレビの生放送番組で発明の内容をすべて説明した場合【最重要】
令和5年度 短答式筆記試験 特許・実用新案 第20問 枝1/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】甲は、発明イをし、令和4年3月22日15時30分に、発明イについて特許出願Aをした。乙は、同一の発明イについて自ら発明をして、同日10時30分に特許出願Bをし、同日14時30分にテレビの生放送番組においてその発明の内容をすべて説明した。この場合、甲の特許出願Aは、乙の発明イが、特許法第29条第1項第3号に掲げられた電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明となることにより、拒絶の理由を有する。また、乙の特許出願Bが、先願とはならないため、特許法第39条第1項の規定により拒絶の理由を有することにはならない。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特29条1項1号・3号、特39条1項・2項、特49条2号

【解説】この枝は前段と後段で結論が分かれる作りになっています。

前段(誤り)——放送は一方向にしか情報を送信できないため「電気通信回線」に含まれません。したがって根拠は3号ではなく1号(公然知られた発明)です。なお時刻を見ると、放送が14時30分、甲の出願Aが15時30分なので、「特許出願前」(時・分まで判断)に公然知られたことになり、拒絶されるという結論自体は正しい。号だけが違います。

後段(正しい)——甲のAと乙のBはいずれも同じ日の出願です。39条1項は「異なつた日」に二以上の出願があった場合の規定なので、時刻の先後にかかわらず適用されません(適用され得るのは39条2項の協議)。

前段が誤りである以上、枝全体としては✕になります。

【なぜ間違えるのか】理由は2つあります。
①「テレビ=電波=電気通信」という日常語のイメージで3号に引き寄せられる。
②前段で「拒絶される」という結論が正しいため、根拠条文の確認を飛ばして○を付けてしまう。
この枝は、時・分を細かく書き込んで29条(時分まで見る)と39条(日でしか見ない)の非対称性まで同時に試しています。1つの枝で3つの論点を回収しにきている、非常に密度の高い出題です。

【関連して押さえる条文】特2条3項(放送によるプログラム等の提供は「実施」に含まれ得る点と対比)、特39条2項・6項(協議)

Q4 公衆の閲覧に供されているマイクロフィルム
平成17年度 短答式筆記試験 第43問 枝(ロ)/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】公衆の閲覧に供されているマイクロフィルムは、複写物の交付が可能だとしても、特許法第29条第1項第3号の刊行物とは言えない。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特29条1項3号

【解説】「刊行物」は、公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図面その他これに類する情報伝達媒体を指します。紙媒体に限られません。マイクロフィルムは、公衆の閲覧に供されていれば公開性と情報性を備え、複写物の交付が可能であれば頒布性も満たすため、刊行物に該当します。

【なぜ間違えるのか】「刊行物」という語から書籍や雑誌を思い浮かべてしまい、媒体の形式で判断してしまうからです。形式ではなく、公開性・情報性・頒布性の3要素で裁く——この裁き方さえ持っていれば、CD-ROMでもマイクロフィルムでも同じ手順で処理できます。

【関連して押さえる条文】特29条1項3号後段(電気通信回線)、特36条4項2号(文献公知発明の情報の所在)

Q5 外国の図書室に収蔵されたが誰も閲覧していない刊行物
平成20年度 短答式筆記試験 第20問 枝(ニ)/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】甲は、部品aと部品bの組合せからなる発明イを自ら発明して、日本国においてイについて特許出願Aをした。乙は、南アフリカ共和国において、部品aからなる発明ロを自ら発明した。ロは刊行物Xに掲載され、Xは同共和国の大学の図書室にAの出願の日前に収蔵され公衆に閲覧可能な状態になっていたが、Aの出願時までにXを閲覧した者はいなかった。Aの出願前において部品bは公知であり、当業者が、部品aを知っていればこれに部品bを組み合わせることを、Aの出願前において容易に想到することができ、イの奏する効果はロの奏する効果と比較して有利なものとはいえなかった場合でも、Aは特許法第29条の規定により拒絶されることはない。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特29条1項3号、特29条2項、特49条2号

【解説】3つの論点が重ねられています。
地理的範囲——南アフリカ共和国は「外国」に含まれるので、日本国内でなくても問題ありません。
「頒布」の意義——刊行物Xは公衆に閲覧可能な状態に置かれていたので、現実に閲覧した者がゼロでも「頒布された刊行物」に該当します。したがって発明ロは29条1項3号の発明です。
進歩性——部品bも公知なので、aもbも29条2項にいう「前項各号に掲げる発明」に当たります。両者を組み合わせることが容易で、効果も有利といえないのなら、発明イは進歩性を欠き、Aは29条2項により拒絶され得ます。
「29条の規定により拒絶されることはない」と言い切っているので誤りです。

【なぜ間違えるのか】「閲覧した者はいなかった」という一文に安心してしまうからです。1号は現実に知られたことを要するが、3号の「頒布」は要しない——この非対称性が本丸です。
もう一点、この枝は新規性ではなく進歩性で落としにきていることにも注意してください。発明イ(a+b)と発明ロ(a)には相違点があるので新規性はあります。相違点があるとき次に進むのが進歩性の判断でした。

【関連して押さえる条文】特29条2項(進歩性)、特29条1項1号との対比

Q6 インターネットのサイトに開示された発明とアクセスの証明
平成17年度 短答式筆記試験 第43問 枝(イ)/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】インターネットのサイトに開示された発明が、特許法第29条第1項第3号に規定する公衆に利用可能となった発明であることを証明するためには、そのサイトにアクセスがあったことを証明する必要がある。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特29条1項3号

【解説】「公衆に利用可能となった」とは、発明の開示された情報が不特定多数の者にアクセス可能な状態に置かれることをいい、現実に誰かがその情報を見たという事実は必要ありません。Q5の「頒布」と同じ考え方で、状態が基準であって、現実の閲覧・アクセスは基準ではないということです。

【なぜ間違えるのか】3号後段だけを単独で覚えていると、「アクセスログがないと立証できないのでは」という実務的な発想に引っ張られます。前段の「頒布」と後段の「公衆に利用可能」は同じ思想で作られた双子の規定だと捉えておくと、一方から他方を導けます。

【関連して押さえる条文】特29条1項3号前段(頒布された刊行物)

Q7 料金を払った者のみがアクセスできるサイト
平成30年度 短答式筆記試験 特許・実用新案 第17問 枝(イ)/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】特許法第29条第1項第3号に規定される「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」に、料金を払った者のみがアクセス可能な発明が該当する場合はない。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特29条1項3号

【解説】「公衆に利用可能」の判断で問われるのは、アクセスできる者が「不特定の者」か「特定の者」かであって、有償か無償かではありません。料金さえ払えば誰でもアクセスできるサイトなら、アクセスできる者は不特定です。したがって「該当する場合はない」と言い切る枝は誤りです。
これに対し、守秘義務を負う者や特定の会社の従業員だけがアクセスできる情報は、たとえ無料でも「公衆に利用可能」とはなりません。

【なぜ間違えるのか】「公衆」=「誰でもタダで見られる」と読み替えてしまうからです。有料の学術データベースや有料記事を思い浮かべれば、それらが公知資料として扱われないと困ることは直感的にわかるはずです。切り分けの軸は「金銭」ではなく「特定/不特定」

【関連して押さえる条文】特29条1項1号(秘密保持義務による非公知)と同じ発想である点を確認

Q8 新規性喪失の例外の適用を受けた出願と29条の2
令和5年度 短答式筆記試験 特許・実用新案 第20問 枝2/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】甲は、発明イをし、令和2年12月10日に、発明イについてインターネットを通じて公開し、令和3年3月22日に、発明イについて特許出願Aをし、同時に新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を特許庁長官に提出し、その出願の日から30日以内に、発明イが新規性の喪失の例外の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を特許庁長官に提出し、その後甲の特許出願Aは、出願公開された。乙は、同一の発明イについて自ら発明をして、令和3年2月15日に特許出願Bをし、その後、乙の特許出願Bは、出願公開された。この場合、発明イについて、甲の特許出願Aは乙の特許出願Bによる拒絶の理由を有しない。また、乙の特許出願Bはインターネットを通じて公開された発明イによる拒絶の理由を有する。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特29条1項3号、特29条の2、特30条2項、特49条2号

【解説】これも前段と後段で分かれます。

後段(正しい)——乙の出願B(令和3年2月15日)は、甲のインターネット公開(令和2年12月10日)より後です。乙は甲と無関係に自ら発明した第三者なので30条の救済はなく、Bは29条1項3号により拒絶理由を有します。

前段(誤り)——ここが本題です。甲は30条の手続を適法に踏んでいますが、30条2項の効果は「29条1項及び2項の規定の適用について」しか及びません。29条の2は救済の射程外です。乙の出願Bは甲の出願Aより先の出願で、Aの出願後に出願公開され、発明者も出願人も異なります。したがってAはBを拡大された先願として29条の2により拒絶され得ます

前段が誤りなので、枝全体としては✕です。

【なぜ間違えるのか】「30条の手続をきちんと踏んだ=もう安全」と思ってしまうからです。30条は自分が公開したことによる自爆を防ぐだけの規定であって、他人が先に出願していた場合まで守ってくれるわけではありません。
この構図は繰り返し出題されています。30条の適用を受けても出願日は遡らない——この一点を押さえておけば、29条の2でも39条でも同じように処理できます。

【関連して押さえる条文】特29条の2、特39条5項(拒絶査定確定による先願の地位の喪失)、特64条(出願公開)

Q9 在外者による新規性喪失の例外の証明書提出
令和7年度 短答式筆記試験 特許・実用新案 第2問 枝(ロ)/出典:特許庁ウェブサイト

【問題】在外者である甲は、特許出願に係る発明について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとし、特許出願と同時にその旨を記載した書面を提出した。しかし、甲は、その責めに帰することができない理由により、特許出願に係る発明が新規性喪失の例外の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面(以下「証明書」という。)を特許出願の日から30日以内に提出することができなかった。この場合、甲は、当該その責めに帰することができない理由がなくなった日から2月以内、かつ特許出願の日から1年4月以内であれば、証明書を提出することができる。

【正誤】✕(誤り)

【根拠条文】特30条3項・4項

【解説】30条4項の救済期間は、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては2月)以内で、かつ30条3項に規定する期間(出願日から30日)の経過後6月以内です。枝の前半「2月以内」は在外者なので正しいのですが、後半の「特許出願の日から1年4月以内」が誤りです。

【なぜ間違えるのか】「1年4月」という数字が、外国語書面の翻訳文提出期間(特36条の2第2項)として実在するため、もっともらしく見えてしまうからです。期間の数字は起算点とセットで覚えないと、この手の枝に必ずやられます。「14日/在外者は2月」「30日の経過後6月」という2段構えを、そのまま声に出して覚えてしまうのが早いです。

【関連して押さえる条文】特30条2項(1年)、特30条3項(30日)、特36条の2第2項

論文の答案フレーム2パターン

パターン1:新規性が主論点になる出題【問題文の型】「甲は展示会で自社製品を発表した後、その製品に係る発明について特許出願をした。甲の出願は特許を受けることができるか。」

【答案の骨】
趣旨:特許制度は発明の公開の代償として独占権を与えるものであるから、すでに公開された発明に独占権を与える必要はない。そこで29条1項は各号の発明を特許の対象から除外している。
要件のあてはめ:(ア)時点——展示会は出願前か(時・分まで検討)/(イ)場所——国内外を問わない/(ウ)態様——展示会での発表が1号(公然知られた)か2号(公然実施)か3号(カタログ配布があれば刊行物)か
例外の検討:30条2項の適用可能性。行為に起因する公開であること、1年以内の出願であること、出願と同時の書面提出、30日以内の証明書提出を順に検討する。
結論:30条の要件を満たせば29条1項各号に該当しないものとみなされ、特許を受け得る。

【落としやすい一言】30条は「新規性を回復する規定」ではなく、29条1項各号に該当しないものとみなす規定です。「新規性が回復する」と書くと減点対象になり得ます。また、30条の適用があっても第三者が独自に同じ発明を出願していれば39条で負ける点まで書けると厚みが出ます。

パターン2:新規性が脇役として絡む出題【問題文の型】「乙は甲の特許権に基づく差止請求を受けた。乙は、当該特許発明が出願前に外国の雑誌に掲載されていたことを発見した。乙はどのような対抗手段を採り得るか。」

【答案の骨】
無効理由の存在:29条1項3号に該当するなら123条1項2号の無効理由がある。
手段の選択:(ア)無効審判の請求(123条1項)/(イ)侵害訴訟における権利行使の制限の抗弁(104条の3第1項)/(ウ)設定登録から6月以内なら特許異議申立て(113条2号)
要件の検討:外国の雑誌でも「日本国内又は外国において」に含まれる。「頒布された刊行物」といえるか(公開性・情報性・頒布性)、「記載された発明」といえるか(当業者が反復実施できる程度の開示があるか)を検討する。
結論:104条の3の抗弁は無効審判を経ずに主張でき、訴訟内で完結する点で機動的である。

【落としやすい一言】異議申立ては何人も請求できるのに対し、無効審判は原則として利害関係人に限られます(123条2項)。主体要件の違いを一行入れておくと、条文を理解している答案に見えます。

法改正メモ平成11年改正:1号・2号の地理的基準を「日本国内」から「日本国内又は外国」へ拡大。あわせて3号に「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」を追加。
平成23年改正:30条について、従来の限定列挙方式(試験・刊行物発表・電気通信回線発表・学術団体の研究集会・博覧会出品)を改め、権利者の行為に起因して新規性を喪失した場合を広く対象とする方式へ変更。青本は、インターネット動画配信は対象なのにテレビ放送は対象外という不均衡が顕在化していたことを改正理由として挙げています。
平成30年改正:30条の例外期間を6月から1年に延長(平成30年6月9日以降の公開行為に適用)。

関連条文マップ——この条文の周辺

  • 特29条1項(新規性)← 本記事
  • 特29条2項(進歩性)——新規性をクリアした発明が次に通る関門
  • 特29条の2(拡大された先願の地位)——出願時は未公開だった先願との関係
  • 特30条(新規性喪失の例外)——29条1項各号に該当しないものとみなす救済
  • 特39条(先願)——同一発明の二重出願を日単位で調整
  • 特49条2号・113条2号・123条1項2号——新規性欠如の効果

一問一答で総復習

29条1項の新規性は、発明をした時を基準として判断される。
特許出願時を基準に判断する。発明時を基準とするのは特2条1項の「創作」。
29条1項の「特許出願前」は、日だけでなく時・分も考慮される。
39条・72条が日単位でしか見ないのと対照的。
発明の内容を知る者が極めて少数であれば、秘密保持義務がなくても「公然知られた」には当たらない。
人数ではなく秘密保持義務の有無で判断する。
工場の従業員多数が発明の内容を知っていれば、それだけで「公然知られた」に当たる。
従業員は秘密を保つべき義務を負うため、公然ではない。
頒布された刊行物に該当するには、現実に誰かがその刊行物を見た事実が必要である。
不特定多数の者が見得る状態に置かれれば足りる。
秘密出版物は、複製されたものであっても刊行物に該当しない。
公開性を欠くため。限定出版物・非売品は逆に該当する。
テレビの生放送で発明の内容が説明された場合、29条1項3号の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」に該当する。
放送は一方向通信なので「回線」に含まれない。1号で処理する。
双方向通信を伝送するケーブルテレビは、29条1項3号の「回線」に該当する。
双方向性があるため。放送との違いはここ。
新規性の判断において、審査官は独立した2以上の引用発明を組み合わせて対比することができる。
組合せができるのは進歩性(29条2項)の判断。
商標法にも、特許法29条1項に相当する新規性の規定がある。
商標法に新規性という概念はない。識別力(商3条)と先願の他人の登録商標(商4条1項11号)等で処理する。

✅ まとめ
・新規性は「特許出願前(時・分まで)/日本国内又は外国/1号〜3号の態様」の3座標で決まる
・「公然」の分かれ目は人数ではなく秘密保持義務の有無
放送は3号の「回線」に含まれない。1号で処理する
・3号の「頒布」「公衆に利用可能」は、現実に誰かが見た事実を要しない
・新規性の判断では2以上の引用発明を組み合わせられない(それは進歩性の領域)
・効果は49条2号(拒絶)・113条2号(異議)・123条1項2号(無効)
・商標法に新規性はない。四法対照では「該当規定なし」と書けることが得点になる

1分まとめ(通勤中の読み返し用)

新規性=出願前に世に出ていないこと。判断は出願時(時・分まで)、場所は世界中、態様は公知・公用・刊行物/回線の3類型。「公然」は人数ではなく守秘義務の有無放送は回線ではないので3号ではなく1号。刊行物と回線は誰かが見た事実は不要。組合せ禁止(=組み合わせたら進歩性)。効果は49②・113②・123①ii。商標に新規性はない。

この条文を学ぶのに使った教材

この記事は、条文(e-Gov法令検索)・青本(工業所有権法逐条解説)・特許庁の審査基準・特許庁公表の過去問を一次資料として、私自身が学習した内容を整理し直したものです。青本は分厚くて敬遠されがちですが、29条のように条文だけでは絶対に答えが出ない論点——「放送は回線か」「少数でも公然か」——については、青本の該当箇所を一度読んでおくだけで短答の正答率が変わります。

青本の効率的な使い方や、四法対照法文集・過去問集との併用については、別途まとめる予定です。

あわせて読みたい

出典

  • 条文:e-Gov法令検索「特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)」
  • 青本:特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』(発明推進協会)第29条
  • 審査基準:特許庁ウェブサイト「特許・実用新案審査基準 第III部 第2章 新規性・進歩性」https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/index.html(2026年8月18日利用)
  • 過去問(Q1・Q9):特許庁ウェブサイト「令和7年度弁理士試験短答式筆記試験問題及び解答」https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/2025tanto.html(2026年8月18日利用)
  • 過去問(Q3・Q8):特許庁ウェブサイト「令和5年度弁理士試験短答式筆記試験問題及び解答」(2026年8月18日利用)
  • 過去問(Q7):特許庁ウェブサイト「平成30年度弁理士試験短答式筆記試験問題及び解答」(2026年8月18日利用)
  • 過去問(Q2・Q5):特許庁ウェブサイト「平成20年度弁理士試験短答式筆記試験問題及び解答」(2026年8月18日利用)
  • 過去問(Q4・Q6):特許庁ウェブサイト「平成17年度弁理士試験短答式筆記試験問題及び解答」(2026年8月18日利用)
  • 過去の試験問題一覧:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/index.html(2026年8月18日利用)

更新履歴

日付内容
2026年8月初版公開

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